2003年の日本は1993年以来10年ぶりの顕著な冷夏となりました。 南西諸島を除く全国的な低温と日照不足により、 農業を主に各種の産業が大きな被害を受けました。 日本の夏の天候は、日本の社会に大きな影響を与えます。
本書は、2003年に起こった日本の冷夏を対象に、 最新の研究成果を大きく3つの部分に分けてまとめました。
第I部は、 2003年夏の大気と海洋の状況に関する観測的研究による 実態の把握を行っています。
第II部は、日本の夏の天候に影響を与える様々な要因を探っています。 季節の時間スケールでは、 日本付近以外の遠く離れた熱帯や高緯度地域から様々な情報や信号が、日本まで伝わってきます。日本の夏の天候は、 このような様々な外的な要因に支配されています。 この個々の要因に関する詳細な研究成果を紹介しています。
第III部は、日本の夏の天候の予測可能性について論じています。 日本の夏の天候には、 複雑に絡み合った様々な要因が影響を与えています。しかし、どの要因がどの程度寄与しているかを分離して 定量的に特定することは容易ではありません。 そのため、日本の夏の天候の予測は容易ではありません。
本書は、日本の天候の変動のメカニズムの解明、 さらに季節予報の精度向上に役立つと期待されます。
【編集】楠 昌司 199ページ、2005年11月15日発行 【価格】会員:2,400円、会員外:3,700円 (気象研究ノート編集委員会) |