気象研究ノート第214号「オホーツク海の気象 -大気と海洋の双方向作用-」

 日本の北に位置するオホーツク海、北の果てにある茫洋とした海、冬に流氷がやってくる頃にその名前を耳に挟む程度の、日本に住む多くの方にとって最もなじみの薄い海かもしれません。しかし夏冬ともにオホーツク海一体には強い水平温度勾配が存在し、春~夏には日本にしばしば異常低温をもたらすオホーツク海高気圧が発生、冬には世界で最も低緯度に海氷が拡大、周辺一帯の特異な気候場の形成に寄与します。環オホーツク海に目を移すと、極東最大の河川アムール川からの淡水供給はオホーツク海独特の海洋構造の形成に寄与、カムチャッカ半島に存在する氷河はこの一帯の気候変動を知る手がかりとなるでしょう。オホーツク海は北半球の大気海氷海洋陸面相互作用の縮図、すなわち寒冷圏の気候研究のモデル海域とも言えるのです。本書ではオホーツク海の特殊性や重要性、夏と冬の気象及び日本の天候への影響、環オホーツク海やグローバルな変動とのかかわりに加え、オホーツク海研究にかかわるデータ(観測、解析値、モデルなど)の諸問題についても取り上げます。本書はこれまでのオホーツク海研究を礎に新たな知見を提唱する野心作であり、オホーツク海研究をいざなう啓蒙書でもあります。しかしまだオホーツク海の大気海洋現象の謎の多くは解明されていません。本書を通じて、あなたもオホーツク海への一歩を踏み出し、そしてこの北の海の謎に挑みませんか?

 

【目次】

  • 第I部 オホーツク海の重要性と特殊性
    • 第1章 オホーツク海研究への誘い
    • 第2章 大気海洋間熱フラックスから見たオホーツク海の海氷
    • 第3章 高層気象観測データから見るオホーツク海の熱収支 
  • 第II部 夏の気象 ―オホーツク海高気圧―
    • 第4章 オホーツク海高気圧の観測 -大気境界層の霧の役割-
    • 第5章 ブロッキングに伴う地表寒冷高気圧の形成 -オホーツク海高気圧とシベリア高気圧-
    • 第6章 オホーツク海の霧と北海道のヤマセ
  • 第III部 冬の気象 -大気・海氷・海洋相互作用-
    • 第7章 オホーツク海の海氷と大気場との関係
    • 第8章 海氷域の解析とその変動の特徴
    • 第9章 海氷域の熱フラックスの観測
    • 第10章 オホーツク海の海氷域変動が大気場に及ぼす影響
  • 第IV部 さまざまな視点によるオホーツク海研究
    • 第11章 海氷と流量の負の関係 -オホーツク海とアムール川から-
    • 第12章 カムチャツカ半島の氷河に残される北部北太平洋の気候変動
    • 第13章 オホーツク海の海氷域変動とグローバル変動とのかかわり 第V部 オホーツク海研究にかかわるデータとモデル
    • 第14章 観測データ、客観解析・再解析データ
    • 第15章 全球大気海洋結合モデルにおけるオホーツク海の海氷

 

【編集】立花 義裕、本田 明治
178ページ、2007年8月3日発行
【価格】会員:2,500円、会員外:3,700円
(気象研究ノート編集委員会)