気象研究ノート第225号「2010年夏日本の猛暑」

2010年の夏に日本の平均気温が、気象庁の統計開始以来の最高記録となりました。日本では多くの人が熱中症で亡くなり、熱中症の予防法や対処法が頻繁に報道されました。地球温暖化に伴い、日本の気温が過去100年間に次第に上昇してきたのは確かです。しかし、2010年の夏の日本付近の気温偏差は温暖化の上昇幅と比べて非常に大きいため、地球温暖化以外の原因があったと思われます。日本の外では、2010年の夏は、ロシアの熱波、パキスタンの大雨など、地球規模で異常気象と呼ぶべき変動が多数起きていました。地球の大気は一つに繋がっているので、ある場所の異常気象が他の場所の異常気象を引き起こすことがあります。本書は、最新の研究成果を基に、2010年の夏の様々な異常気象の実況、要因、予測に関する科学的知見について詳細にまとめました。本書が今後起こりうる極端な気象現象や異常気象の原因解明と予測に役立つことを期待します。

【目次】

  • 第1章2010年夏の日本の天候と大気循環場の特徴
  • 第2章2010年不活発な台風活動
  • 第3章2010年夏の熱中症
  • 第4章2010年夏季ユーラシア域の異常気象の連関と偏西風の異常蛇行
  • 第5章インド北部ラダークの洪水
  • 第6章2010年:北極振動の冬から夏への極性反転と猛暑の連関
  • 第7章2010年7月の日本の猛暑の出現と熱帯循環場の急変
  • 第8章「2010年夏季における中緯度対流圏の昇温」中緯度対流圏の昇温はどのようにしてもたらされたのか?
  • 第9章2010年夏の東アジアにおける異常気象と遠隔影響パターン
  • 第10章気象庁季節アンサンブル予報システムによる2010年夏の予測
  • 第11章大気海洋結合モデルを用いた2010年夏の季節予測実験―2010年猛暑に対する大西洋海面水温偏差の影響―
  • 第12章MIROC大気モデルによる2010年夏季の天候再現実験
  • 第13章MRI-AGCMによる2010年夏の再現実験
  • 第14章2010年夏季のヨーロッパ-ウラルブロッキングとその将来変化
  • 第15章高解像度大気モデルによる日本付近の熱波の将来予測
  • 第16章地球温暖化に伴う熱中症の被害予測

【編集】楠昌司
B5判190ページ、2012年5月10日発行
【価格】会員:3,400円、会員外:4,900円

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気象研究ノート編集委員会