地球上で最も激しい擾乱，台風。古くから，世界中の多くの研究者が台風に関わる様々な謎に挑戦をしてきましたが，依然として課題は多く残されています。そのために，台風は，今もなお研究者を魅了する興味深い研究対象となっています。前回の気象研究ノート台風号(第197号，2000年)から10年以上が経ち，近年の地球観測網の拡充，数値シミュレーションの進化，国際・国内の横断的な研究プロジェクトにより，台風の理解はあらゆる分野において飛躍的に進みました。そこで今回の台風号では，それぞれの分野で活躍している研究者に台風の基本的な知見から最新の研究成果を整理していただきました。

本号は，多くの側面を持つ台風研究を，上下巻の二つに大別しました。台風の発生・発達メカニズムや，微細な内部構造に関わる基礎研究を上巻としました。下巻では観測や予報技術の応用研究，地球温暖化における台風予測，台風研究の国際協力や取り組みに焦点を当てています。なお、下巻では、サブタイトル「台風予報」に関連した研究だけでなく、数値モデルがどのように技術発展して台風メカニズムの研究に用いられてきたか、その歴史を読み解く内容にまで拡張されています。本号が台風研究や気象予報や防災に従事されている方々にとって現時点で最良の解説書になると同時に，若手研究者や大学院生に大きな刺激になることを期待しています。

第226号「台風研究の最前線（上）－台風力学－」
【目次】

• 第1章 台風概説・・・・・・・・・・・・・・・杉正人
• 第2章 発生過程・・・・・・・・・・・・・・・筆保弘徳
• 第3章 発達過程と成熟期・・・・・・・・・・・筆保弘徳・宮本佳明
• 第4章 メソ構造・・・・・・・・・・・・・・・坪木和久・伊藤耕介
• 第5章 台風の温帯低気圧化・・・・・・・・・・北畠尚子
• 第6章 台風と海洋・・・・・・・・・・・・・・和田章義

第227号「台風研究の最前線（下）－台風予報－」
【目次】

• 第7章 最適観測法・・・・・・・・・・・・・・中澤哲夫
• 第8章 台風の進路予報・・・・・・・・・・・・山口宗彦
• 第9章 台風強度予報と再予報実験・・・・・・・斉藤和雄・川畑拓矢・国井勝
• 第10章 モデル研究現状と将来の展望・・・・・大内和良・佐藤正樹・益子渉
• 第11章 台風と地球温暖化・・・・・・・・・・吉村純・杉正人・村上裕之
• 第12章 台風のメカニズムと数値モデル・・・・山岬正紀
• 第13章 熱帯低気圧と国際協力・・・・・・・・黒岩宏司

【編集】筆保弘徳、中澤哲夫

第226号 B5判189ページ、2013年1月28日発行
【価格】会員：3,300円、会員外：4,900円

第227号B5判165ページ、2013年1月28日発行
【価格】会員：3,100円、会員外：4,500円

気象研究ノート編集委員会