第43期理事長就任のご挨拶

第43期理事長就任のご挨拶

竹見哲也
京都大学防災研究所

第43期理事長・竹見哲也日本気象学会第43期理事長に選任されました竹見でございます.理事長という責任の重さに身が引き締まる思いでおります.私一人の力は大変微力ですが,中村 尚副理事長,理事・監事の皆様,各委員会の皆様と協力し,また会員の皆様ともに,日本気象学会の発展のため,力を尽くしたいと思っております.

私が気象学会会員になったのは大学院に入学した30年前でした.大学院重点化により大学院生が急増していた頃で,気象学会の春・秋の大会や夏の学校で,同世代の友人と会って様々なことを語り合うのがとても楽しみでした.このような交流の機会があったのは,諸先輩方の学会運営に対するご尽力のおかげであったことは言うまでもありません.諸先輩方の力で発展してきた気象学会を,次の世代にもますます魅力あるものにしていくことが責務だと思っています.

これまで発展を続けてきた気象学会は,今は変革すべき時期に入ったと強く認識しています.第42期理事会において,佐藤 薫前理事長の主導で「大会のあり方検討ワーキンググループ(WG)」が立ち上げられ,今後の大会のあり方について方向性が示されたのは,変革の一つです.このWGでまとめられた最終案は,1) 春季大会を取りやめ,日本地球惑星科学連合の大会の中での気象学会共催セッションを充実させるとともに,気象学会独自の大会は年に1回にする,2) 1回の年次大会は期間を長めにし,適切な講演時間を確保する,3) 大会開催の実行委員会は,これまでの春季・秋季大会の担当グループ群を合わせ,各グループの担当頻度を下げる,といった事柄です.第43期では,この方針を受けて,大会の新しい開催方式の具体化を着実に進めるため,早坂忠裕理事を主査として「大会実施形態の移行に関するWG」を企画調整員会の下に設置しました.関係する理事や委員の皆様と議論し,具体的な検討を進めているところです.会員の皆様にも是非ともご協力をお願いいたします.

変革の二つ目は,学会の英文学術誌(気象集誌とSOLA)の運営に係わるものです.既にお知らせしております通り,2026年より気象集誌とSOLAの出版をSpringer/Nature社に委託することにしております.これを契機として,気象集誌とSOLAは今後,世界の著名な学術誌と伍するような国際学術誌として発展していくものと信じております.会員の皆様におかれましては,今後も気象集誌やSOLAを成果発表の場として活用してくださるようお願いします.また,気象集誌,SOLAには,日本の気象・気候特性を反映した分野,特に,メソ降水系,豪雨・豪雪,梅雨・モンスーン,気候変動等の分野で,多数の良質な論文が出版されていますので,気象学会発学術誌の掲載論文に注目していただければと思います.

他にも,会員数の減少傾向への対策,会員構成の多様性の確保といった点で,気象学会は変革を進めなければなりません.気象学会は,これまでは,研究者が学術活動をするための場という側面が強かったと思います.一方で,研究者だけでなく,気象に係る現業や実務に携わる方,気象予報士,学校教員といった研究を本務としない方々にも,気象学会が魅力ある存在に映るようにしていかなければなりません.多様な会員が集う魅力的な学会となるべく,知恵を絞ってまいりたいと思っております.また,気象学を専攻する大学院生が卒業後,気象庁等官公庁や民間会社等,研究を本務としない様々なセクターにおいて,気象防災・環境影響評価・気候変動対策といった様々な分野で活躍するよう,人材育成にも学会として継続的に取り組んでいくことが大切です.そして,気象学会が,彼らが活躍できる場を提供していかなければならないと思います.会員の皆様に,より活動しやすい状況を感じていただけるような場を提供したいと思っています.

気象学会は,将来を見据えて,少しずつ,かつ着実に変わっていく必要があります.こういった変革は,理事会構成員だけでできるものではなく,増してや私一人の考えで進められるものでもありません.会員皆様の理解と協力が欠かせません.皆様の力を貸していただきながら,気象学会がより良い場となるように務めたいと思います.