令和7年1月22日
雇い止め問題アンケートを受けての提言
公益社団法人日本気象学会
理事長 竹見 哲也
2013年4月施行の改正労働契約法による無期雇用転換申し込み権発生前に、雇い止めやクーリングオフをすることで無期雇用転換を避ける行為が大学・研究機関等の現場で数多く生じている[参考1]。アンケート結果では、競争的資金で雇用されている任期付き研究員・教員の無期雇用転換を各機関が避ける行為の影響を受けて、研究者が従事しているプロジェクトの期間途中で別の機関に異動せざるを得ない、もしくは無職となり研究の継続が困難になった事例が報告されている。また、研究や授業の継続性や円滑性に不可欠な技術員や実験等補助員といった専門技術を有する職員の雇止めやクーリングオフが、研究・教育活動の停滞につながっているとの回答も見受けられた。
このような事例は、研究活動の持続性を阻害し、研究環境を悪化させるだけでなく、研究者および研究支援者の人口減少を招き、近年問題とされている我が国の研究力の低下を加速させるという負のスパイラルを助長している。そのため日本気象学会では、早急な研究環境の改善および改正労働契約法が設置された当初の目的の再確認を求め、関連省庁等関係機関に対し、以下の4項目を提言する。
(1) 各機関において、無期雇用転換に関する規定を整備し、全職員に周知するよう、所管省庁よりあらためて通知する。
(2) 任期付き研究員・教員が人件費として支出可能な資金を有している場合には、有期雇用を継続できる仕組みを作る等、柔軟な対応をとることを所管省庁より各機関に通知する。
(3) 専門技術を持つ職員の無期転換を積極的に行うことを所管省庁より各機関に通知する。
(4) 多くの機関が安定的に雇用するための財源の確保が難しい状況であることから、無期雇用転換を受け入れ可能とするための運営費交付金の増額を併せて求める。
参考1:「大学・研究機関でのいわゆる「雇い止め問題」についてのアンケート」の結果