日気学第 35-62 号
2009 年 4 月 17 日
宇宙開発戦略本部
本部長
内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
社団法人 日本気象学会
理事長 新野 宏
宇宙基本計画における気象学・大気科学に関する振興について(要請)
社団法人日本気象学会は、気象学の研究を盛んにし、その進歩を図り、国内および国外の関係学会と協力して、学術文化の発達に寄与することを目的として活動を行っております。近年、地球温暖化等の地球環境変動や、熱帯低気圧や豪雨に伴う大規模な自然災害等が注目を集めておりますが、これらの現象の実態を把握し、そのメカニズムの解明を進めると共に、正確な予知・予測手法を開発し、正しい知識を社会に普及することは当学会の重要な責務と考えております。
気象学・大気科学が対象とする大気は全球的な広がりを持つため、そこで生起する現象の実態把握・機構解明・予知予測のためには、地上からの観測が困難な海洋上などでも均質なデータが取得できる衛星による地球観測が不可欠のものとなっております。このことは、我が国の気象業務における運輸多目的衛星「ひまわり」の多大な貢献からも明白であります。このため、世界各国は様々な地球観測衛星を整備して、気象学・大気科学の研究や気象業務の発展に寄与して参りましたが、その中で静止気象衛星、環境観測技術衛星、熱帯降雨観測衛星などの整備を通して、我が国が宇宙からの地球観測に果たしてきた役割は極めて大きいものがあります。地球環境変動や自然災害に適切に対処することが重要な課題である現状に鑑みますと、地球観測衛星の気象学・大気科学に果たす意義はますます大きくなることは必至であります。貴本部におかれましては、平成20年8月27日の宇宙基本法施行を受けて、宇宙基本計画を検討されておられますが、その際には、気象学・大気科学の学術的発展のために、以下に述べる諸事項に留意されますことを強く要請いたします。
- 宇宙基本計画の中で地球観測を大きな柱の1つとして位置づける。
- 気象学・大気科学の発展のため、政策担当者と研究者との連携を深める枠組みを強化す る。
- 気象災害防止等に関わる研究・開発等、実用的な利用研究にも配慮する。
- 観測情報・成果の公開を原則とすることで、健全な学術の発展に配慮する。