第20回航空気象研究会開催のお知らせ


 航空機の運航に影響を及ぼす気象の観測,予報,情報提供などについて,気象学会レベルで広く交流し研究を促進するため,2006年3月に日本気象学会の研究連絡会の1つとして「航空気象研究連絡会」が設置されました.
 今般,同連絡会主催による「第20回航空気象研究会」を下記要領で開催します.

【開催概要】
日時:2026年2月6日(金)13時30分~17時30分
会場:気象庁会議室+オンライン(Zoomウェビナー)併用

【参加申込について】
 参加方法は「現地参加」又は「オンライン参加」を選択できます.
 参加申込ページ(https://forms.office.com/r/3y7ahM7puP)にて必要事項を入力し,参加方法を選択の上,お申し込みください.
 詳細は参加申込ページ内の記載及び申込後に事務局から送付するメールをご確認ください.

申込締切:2026年2月3日(火)

【研究発表題目(発表順)】
1.冬期運航における新たな課題 ~雪氷路面における強風や積雪による影響~
松澤弘樹(日本航空株式会社)

 本講演では,冬期運航における新たな課題として,雪氷路面下での湿った降雪・積雪が航空機運航に及ぼす影響について解説する.特に,地上滑走時に車輪周辺や脚部へ雪氷が付着することで生じる機材不具合の事例を紹介し,その発生メカニズムと安全上のリスクを整理する.また,積雪下での強風や強い降雪が航空機の運航にどのような影響をもたらすのかについても解説したい.

2.航空自衛隊の各飛行場における熱雷予想AI技術について
河合克仁(航空自衛隊航空気象群)

 近年,気象分野におけるAI技術の利活用が進んでおり,機械学習や深層学習を用いた手法が注目されている.特に,ニューラルネットワークは機械学習アルゴリズムの一種であり,ガイダンス作成時に利用されている.しかし,気象庁発雷確率ガイダンスには利用されていない.そこで,ニューラルネットワークを用いた熱雷確率ガイダンス作成を試みた.18箇所の飛行場を対象に,入力値として,大気安定度指数であるSSI(Showalter Stability Index),LI(Lifted Index),SLI(Surface Lifted Index),KI(K Index),TT(Total Totals Index),CAPE(Convective Available Potential Energy)の6変数を与え,隠れ層1層から3層におけるETS(Equitable Threat Score)を算出し,各飛行場における精度を検証した.

3.定量的火山灰(QVA)情報の導入と日本の課題
小野寺三朗(火山防災推進機構)
加藤芳樹(Weather Data Science合同会社)

 航空機の国際航空路上での火山灰被害防止を目的としてICAO(国際民間航空機関) VAAC(航空路火山灰情報センター)から発行されている火山灰情報は,現行の決定論的情報から“QVA(Quantitative Volcanic Ash)”Concentration Information【=定量的火山灰濃度情報】の確率的情報へと,その提供内容・形式が変更されつつある.新たな火山灰情報は最終的に「国際標準」として提供されて行く予定だが,運航者側がこの情報を導入趣旨に沿って活用して行くには,予め導入態勢を構築すると共に要件を満足し続けて行く事が求められている.本発表では新たな火山灰情報の活用に係わるこれら運航者側の課題,及び,日本地域の抱える課題等について議論する.

4.航空機タービュランス情報の利活用 ~PIREPとEDR・SkyPathについて~
浦 健一(株式会社ZIPAIR Tokyo)

 航空機運航において乱気流(タービュランス)は,安全性・快適性・経済性に大きな影響を及ぼす重要な気象現象であり,強い揺れは旅客や客室乗務員の負傷,さらには重大事故につながる可能性がある.そのため,エアラインには継続的かつ高度な対策が求められている.近年,操縦士の体感に基づく従来のPIREPに加え,乱気流強度を定量的に示すEDRや,スマートデバイスを活用してリアルタイムかつ高密度な情報共有を可能にするSkyPathなど,新たな技術が急速に普及している.本講演では,これら多様化する乱気流情報の特性と役割を整理し,安全運航に向けた効果的な利活用の方向性と将来展望を紹介する.

5.航空自衛隊における飛行場予報の評価手法について
田畑悦和(航空自衛隊航空気象群)

 航空自衛隊では,飛行場を有する全国の基地で飛行場予報を発表している.飛行場予報の品質向上のためには,その予報の精度を客観的に評価することが必要である.このため今年度から航空自衛隊では,独自に飛行場予報評価のための指数である「広義の適中率」を作成して評価している.この指数を作成するにあたって考慮した事項は,悪天時の評価が重要であること,予報発表の際には安全上の観点から見逃し局限を空振り減少よりも重視することの2点である.これにより視程とシーリングの新評価指数においては,小程度の空振りを「広義の適中」に含めるとともに,予報・観測ともに悪視程・低シーリングがなかった時を評価対象から除外した.発表では,新評価指数を導入して評価したいくつかの飛行場の結果について紹介するとともに,風と天気現象の予想に対する評価手法とその結果についても併せて紹介する.

6.鳥取空港で南風強風時に発生する低層ウィンドシアの成因調査
藤田友香,黒良龍太(宇宙航空研究開発機構)

 鳥取空港では,南風が強まる際に着陸経路上でウィンドシア警報が発せられることがある.鳥取県は南部に中国山地を有し,北部は沿岸部にかけて尾根や谷が伸びる複雑な地形をしている.これらの地形を通過して影響を受けた南風が,県東部でどのような風況となっているのかは,まだ十分には理解されていない.
 このため,本研究では着陸経路上における低層ウィンドシアの成因を明らかにすることを目的に,南風強風時の県東部の風況を調査した.対象として,運航に大きな影響が生じた2024年5月6日の事例を取り上げ,気象モデルWRF(Weather Research and Forecasting)を用いて再現・解析を行った.
 その結果,南風は中国山地でおろし風となり,複雑な地形によって局地的に強風域と弱風域を形成する様子が確認された.これらの領域を通過する着陸経路上は風速差が大きく,ウィンドシア警報の条件を満たしやすい環境になっていることが示唆された.

7.仙台空港における激しいおろし風について(2025年3月26日の事例)
吉野勝美(無所属)
伊藤純至,内池晴菜(東北大学)
坂本圭(全日本空輸株式会社)
岩渕巧(気象予報士会東北支部)

 2025年3月26日,仙台平野では寒冷前線通過後の冬型の気圧配置の下で早朝から夕方まで強いおろし風が吹き荒れた.気象衛星観測によると06:30JSTに奥羽山脈風下平野部に南北に走行する帯状のロール雲が現れ形状の変動を伴いながら海上に東進した.
 仙台空港では,気温の急上昇と共に06:10JSTに西よりのおろし風が吹き出し,06:50JSTから最大瞬間風速20m/sを超える強風が持続した.東進してきたロール雲が上空を通過する10:40~11:40JSTに風速が一旦弱まるも,その直後から最大瞬間風速30m/sを超える激しいおろし風に強化され持続した.最大風速は12:38JSTに29038G66KTを記録した.
 仙台では,ウィンドプロファイラがロール雲通過時に下降流域(-3.8m/s)とそれに続く上昇流域(+3.5m/s)を観測しており,ロール雲西端付近の上昇流域でPressure dip(PD)が観測された.PDの時間変動をロール雲の移動から空間分布に変換するとロール雲の風上側からPDの極小値までの距離約16kmにおいて2.8hPaの急な気圧降下の分布が得られた.仙台空港でもロール雲の西端にあたる11:55JSTにP/FR(Pressure falling rapidly)が通報されている.仙台空港におけるロール雲通過後の激しいおろし風はPDに伴う気圧傾度の大きな空間で発現している.

8.太平洋路線の晴天乱気流事例の高解像度シミュレーションと検証
伊藤純至(東北大学)

 太平洋を横断する航空路において航空機が晴天乱気流に遭遇した複数事例を対象に,全球再解析値を初期値・境界値としたメソ気象モデルによるダウンスケール計算を行った.遭遇地点を計算領域の中心に配置し,水平解像度15kmおよび2kmもしくは1kmの計算を実施した.日本付近に比べて観測・解析データの密度がはるかに低い太平洋上においても,高解像度計算により晴天乱気流をもたらした局所的な鉛直流構造を再現できた.解析結果から,遭遇事例における乱気流の発生機構を解析した.


問い合わせ先:航空気象研究連絡会事務局(metsoc_avi_2022@outlook.com)
※@は全角で表記していますので,半角に変換の上ご連絡ください.
主催:航空気象研究連絡会