カラーぺ一ジ
伊豆諸島の島曇り*
加藤信已**
3枚の写真は1998年7月4日,羽田16時10分発八丈島行きの航空機から撮影した
島曇りである(第1図参照).三宅島・御蔵島の島曇りは島全体を覆うほど広がり
がなく,三宅島測候所では17時の日照時間が1時間となっている.一方,八丈島で
は完全に雲が島を覆っており,17時の日照時間は0となっている.当日は,南高北
低の気圧配置で伊豆諸島付近には湿った南西風が卓越していた.
伊豆諸島の島曇りは梅雨期の6月から8月によく現れる.湿度が高い中,島の内
陸では低い雲がたれ込み,海岸に行けば晴れているといった島だけに雲がかる,
天気予報での表現が非常に難しい現象である.
島曇りの調査は進んできており,以下のような状況で発生しやすいと判断さ
れている(参考文献より).
- 発生時期:梅雨時の6月から8月
- 気圧配置;南高北低(太平洋高気圧縁辺,梅雨前線が北)
- 風向;南西から西
- 風速;7メートル前後(5から8メートル)
- 気温と露点温度の差が2℃以下15時の気温と露点温度の差が5℃以下
- 露点温度と海面水温の差が5℃前後
- 明け方の最低気温が海面水温よりも高い
なお,風・気温・露点温度は地上におけるものである.
このように,島曇りの発生を予測するための判断材料は多くなったが,発生の
程度(雲量・雲底高度)には,黒潮流路の変動による海面水温の高低が大きく関わっ
ていることに着目し調査をしている.八丈島空港においては,八丈島が冷水域に
入る黒潮流路の場合に雲底高度が下がり,定期航空機就航率が低くなるという
統計結果がこれまでに得られている.
2000年7月23日12時過ぎ,前日から島曇りに覆われていた八丈島で海水温が1℃上
昇しただけで内陸にある八丈島測候所上空の雲量が10割から2割に劇的に消散
したことがあった.
観光地である八丈島には6月早々から海水浴客が多く来島する.島曇りを天気
予報で「曇」とした場合,天気での印象を悪くしかねない.島の内陸は一日中
「曇り」,海岸では一日中「晴れ」.「曇沿岸部では晴?」毎年悩まされる.
参考文献
加藤信已, 1998:
三宅島・御蔵島・八丈島の島曇り, 東管技術ニュース, 132, 50-51.
窪田邦晃・高塚康史, 1997:
大島の島曇りについてその1-事例解析-, 東京管区気象研究会誌,
30, 66-67.
大野博美, 1995:
八丈島の島曇りについて一事例解析から一, 東京管区地方気象研究会誌
, 28, 107-108.
大野博美, 1999:
八丈島の島曇りについて-その3-一事例解析から一,
東京管区気象研究会誌, 32, 154-155.
高塚康史・窪田邦晃, 1997:
大島の島曇りについてその2一統計解析一, 東京管区気象研究会誌,
30, 68-69.
写真1(上) 三宅島; 写真2(左下) 御蔵島; 写真3(右下) 八丈島
第1図 羽田-八丈島間航空路図.
* Cloudy weather over Izu Islands
** Nobumi Katoh, 八丈島測候所.
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