2019年公開気象講演会『新元号を迎えて~平成の30年間を振り返り、新時代の気象災害に備える~』
日時: 2019年5月18日(土)(大会第4日目)13:30~17:00
場所: 国立オリンピック記念青少年総合センター(大会A会場)
主催: 日本気象学会 教育と普及委員会
後援: 一般社団法人日本気象予報士会
参加費: 無料
参加登録: 公開気象講演会のみに参加される方は、こちらの参加登録フォームから事前登録をお願い致します(登録は締め切りました)。春季大会に登録されている方は、公開気象講演会の事前参加登録は不要です。
今回は「平成30年間の振り返り」をテーマとして取り上げます。平成の時代を振り返ると、科学技術の発展による観測技術・予測技術の高度化、気象現象・災害の特性の変化、社会基盤・制度の変化など、気象分野を取り巻く環境というものは大きく様変わりしています。これからの時代の気象災害に備えるためには、平成30年間における各分野の変化を振り返り、最新の知見について正しく理解しておくことが重要となるでしょう。そこで、今回の講演会では、「平成30年間の振り返り」として、予測、気象災害、気候変動、気象解説の各分野について、平成30年間の変遷や、新時代の展望を紹介していただきます。奮ってご参加くださいますようお願いいたします。
1.平成30年間の気象予測技術の変遷 室井 ちあし(気象庁)
2.気象災害/極端現象の変化 加藤 輝之(気象庁)
3.地球温暖化で異常気象はどう変わるか? 渡部 雅浩(東京大学)
4.伝え手側の変化 南 利幸(NHK気象キャスター)
■ 講演要旨
1.平成30年間の気象予測技術の変遷 室井 ちあし(気象庁)
平成の30年間、数多くの自然災害の経験、天気予報や防災気象情報に対する様々なニーズ、
そして科学技術の発展によって、気象観測・予測技術は大いに進展しました。観測については、従来のラジオゾンデやアメダスの観測に加えて、気象衛星ひまわりの高度化、気象レーダーのドップラー化など、高機能・高精度化が図られました。予測に関しては、最新のスーパーコンピュータの高度化に支えられた数値予報技術の発展により台風進路予報や降水予測の精度が大幅向上しました。またナウキャスト・降水短時間予測技術によって、大雨の動向をより迅速に把握できるようになりました。平成を通じた技術の進歩によって、現在の高度な天気予報が可能となっています。講演では、こうした進展や課題をご紹介します。
2.気象災害/極端現象の変化 加藤 輝之(気象庁)
最近、線状降水帯という言葉を耳にされたことがあるのではないかと思います。気象庁の用語集には、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」と定義されていますが、量的な定義はなされていません。これは、線状降水帯の発生が集中豪雨を引き起こし、土砂崩れなどの気象災害などに直結するためで、大雨に関する注警報と同様に、地域差があるためです。また線状降水帯という言葉は、平成になってから講演者やその周辺で使われ出した非常に新しい用語ですが、集中豪雨のような極端現象を議論する上では、重要なキーワードとなります。本講演では、線状降水帯に着目し、集中豪雨の発生メカニズムや予測可能性について、わかりやすく解説します。
3.地球温暖化で異常気象はどう変わるか? 渡部 雅浩(東京大学)
日本は自然災害の多い国です。中でも、地震や津波、火山噴火とならんで気象災害は人々の生活に深刻な影響を与えてきました。昨年7月の豪雨と猛暑などは記憶に新しいところですが、ほかにも2013年の熱波、2015年の関東東北豪雨や2017年の九州豪雨など、挙げればきりがありません。災害を引き起こす異常気象は昔から起こっていましたが、最近は頻発するようになったと言われます。その要因は、地球規模の温暖化です。しかし、本当のところ、地球温暖化は異常気象を起こりやすくしているのでしょうか。また、世界的に見ると温暖化と異常気象の関係は明らかなのでしょうか。こうした疑問に、最新の気候科学が答えます。
4.伝え手側の変化 南 利幸(NHK気象キャスター)
現在のテレビにおける天気予報は画面が非常に豊富です。実況天気図、予想天気図、ひまわり雲画像、アメダス四要素、推計気象、気象レーダーや降水ナウキャスト、解析雨量や降水短時間予報、天気や気温の分布予報や時系列予報、雨や雪などのGPV、今日明日の天気予報、最高最低気温予報、週間予報など、2分程度の天気予報の中でどの画面を選択すれば分かりやすい気象情報になるのか、毎日頭を悩ませています。台風や大雨の時は警報や土砂災害警戒判定メッシュ情報などもあり、なおさらです。
しかし、平成に入る頃やその前の昭和50年~60年代の天気予報はいたってシンプルで、手書きの実況図と予想天気図、ひまわりの雲画像、今日明日の天気予報、最高最低気温ぐらいしかメニューがありませんでした。
現在と平成に入る頃を比較すると、平成に入る頃はキャスターが数少ない画面で解説し視聴者に天気を想像していただく「語る天気予報」であったのに対し、現在は分布予報やGPVなどで雨や雪の降る強さや地域をご覧いただく「見せる天気予報」になっています。本講演会ではテレビにおける天気予報の変遷などをお話しできればと考えています。
司会・進行:塩見 泰子(NHK気象キャスター)
□ 過去の公開気象講演会
2021年 「命を守る身近な気象情報」
2019年 「新元号を迎えて~平成の30年間を振り返り、新時代の気象災害に備える~」
2018年 「台風の強度~台風災害の軽減に向けた航空機観測~」
2017年 「「大雨災害」に備える」
2016年 「台風災害 ~台風列島でどう生き延びるのか?~」
2015年 「気象情報のビッグデータ時代の幕開け」
2014年 「局地風の世界」
2013年 「将来の再生可能エネルギーと気象」
2012年 「地球温暖化問題における科学者の社会的役割」
2011年 「航空安全のための気象学」
2010年 「防災情報の活かし方を考える」
2009年 「数値予報の過去・現在・未来~数値予報現業運用開始50周年記念~」
2008年 「地球温暖化とその対策 ~ノーベル平和賞と横浜市~」
2007年 「災害をもたらす気象~大雨・竜巻・台風~」