熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、米国航空宇宙局(NASA)と宇宙航空研究開発機構 (JAXA)との共同で打ち上げられ、すでに6年間以上の貴重な科学データを送り続 けています。このTRMM衛星が、現在あと2年ほどの観測が可能にもかかわらず、 NASAの 運用経費不足を理由として、今月中にも運用停止すると宣告されました。 (参考 朝日新聞6月9日朝刊: http://www.asahi.com/science/update/0609/001.html)。
TRMMは、世界に先駆けて日本が開発した降雨レーダー(PR)を搭載しています。 TRMMのユニークさは、PRによる降水観測にあります。 降雨の三次元分布が得られ るPRは、台風や集中豪雨などの降雨システムの詳細な構造を明らかにしてきました。 多数の衛星に搭載されているマイクロ波放射計の降雨推定の改良に大きく貢献し、 今ではマイクロ波放射計による降雨推定のための基準器としての役割も果たしてい ます。さらに、気象庁など現業機関での利用もすでに行われています。PRの重要性 は、科学面でも実利面でもきわめて大きいものです。また、科学的成果をまとめた 国内外の論文数は、運用6年半の現在ですでに、230編あまりにのぼり、GATE,FGGE, TOGA,ERBE,ISCCP等々の代表的なプロジェクトの産み出した学術論文数と肩を並べる 勢いです。
もしTRMMを今失えば、精度の高い、かけがえのない降水観測データが今後長期 にわたって得られなくなってしまうことになります。 それは、科学的な成果の芽 をつむことにもつながり、ひいては天気予報など実利用への応用にも影響すること になるでしょう。
逆にTRMMを継続させた場合には、10年近くのデータによる気候値を得ることが可 能になり、経年変化についても議論できることになります。気候モデル研究におい ても現在TRMMの検証利用が進んでおり、また、TRMM観測に合わせた観測研究も計画 されていることから、非常に実り多い科学成果が得られることが期待できます。
気象学会の会員の皆様、ぜひ、TRMMがこれまで果たして来た気象学への貢献と 今後も果たすであろう貢献の大きさに鑑み、TRMMの延命に賛同していただきたく、 お願いする次第です。
ご賛同いただけるかたは、以下のメールアドレスに、件名を必ず「helptrmm」と して、6月20日までに、お送りください。本文には何を書いていただいても結構 ですが、賛同していただける旨とご所属とお名前も書いていただけると助かります。
いただいた署名は、ただちに集計し、この文章とともに、NASAのアスラー局長と JAXAの山之内理事長に届ける予定です。また、TRMMの意義について別の視点から書 いていただける方は、ぜひ山之内理事長宛にお手紙をお送り下さい。
〒105-8060東京都港区浜松町2−4−1世界貿易センタービル |
宇宙航空研究開発機構 東京事務所 山之内秀一郎理事長宛 |
運用停止と宣告された6月末まで残された日は、わずかです。TRMMの存続を願う 人々が多数にのぼるということを、JAXAとNASAに知ってもらい、ぜひTRMMの存続を 実現したいと思います。
ご協力をよろしく御願いします。
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