第30期第1回評議員会議事録
日時
1999年3月25日(木)17:00〜21:00
場所
竹橋安田ビル内 四季交楽「然」(東京都千代田区神田錦町3丁目)
出席者
五十音順敬称略
(評議員)石井和子:フリーアナウンサー・気象予報士会副会長, 榊原雄太郎:岐阜聖徳学園大学教育学部教授・日本地学教育学会会長, 藤吉洋一郎:NHK(日本放送協会)解説主幹, 真鍋淑郎:地球フロンティア研究システム領域長
(名誉会員)小倉義光
(理事)廣田,二宮,石島,神沢,木田,城尾,関口,田中(浩),田中(博),中村(誠),新野,藤部
(その他の出席者)中村(一)監事,徳野監事,事務局(島津,松野,舘)
議事概要
廣田理事長による開会の挨拶と趣旨説明,各理事による担当業務の活動状況の説明が行われた。続いて各評議員と名誉会員から順に意見陳述があり,その後,全体討論が行われた。最後に二宮理事長代理による閉会の挨拶により閉会した。
理事長による趣旨説明
日本気象学会定款第4条の目的の項に,「この法人は,気象学の研究を盛んにし,その進歩をはかり,国内および国外の関連学会と協力して,学術文化の発達に寄与すること」とあるように,学会活動の第1義が学問としての気象学の振興にあることは言うまでもありません。しかし,同時に,現在の気象学会の構成員の中には,学問研究を本務とするもののみならず,技術官庁における気象業務,民間気象予報事業,学校における気象教育,さらにはいわゆるマスコミ,等々の仕事を通じて気象学会と深い関係を持っている会員が多数いることを認識する必要があります。従って,気象学会の活動も,このような多様な側面に対応した内容を積極的に取り入れてゆく必要があろうと考えられます。
今回の評議委員会では,これらの諸問題のうち,特に,「一般市民・社会人への気象学の啓蒙普及」と「初等中等教育における気象学の位置づけ」について,評議員各位の夫々のお立場から,具体的な問題提起や活動内容のご提言をいただければ幸いに存じます。
評議員意見
(以下の意見は,事務局側でまとめたもの)
(榊原評議員)
- 日本気象学会と日本地学教育学会とは, 同じ地学の仲間として古い交流の歴史がある。その一つとして,「夏季大学」の開催にあたっては,後援団体と募集要項を会誌「地学」に掲載しており,毎年好評のようで,後日「夏季大学」参加記録や感想などが掲載されていたこともある。今年の第33回の「夏季大学」からは,後援団体の承認の事務手続き簡素化の1つとして,「夏季大学」は常務委員会の決定を得なくても,事後報告で済ませることとして,早く承認の返事を出すように常務委員会の了承を得た。
- 日本地学教育学会は,学会の活動として,会誌「地学教育」を文部省の補助金の対象として,年6回発行している。内容は原著論文,実践報告,他学会の活動紹介,図書紹介などである。論文や報告には,編集規定により査読制度を設けており,編集委員会の審査を経て掲載の運びとなる。
- 学会に寄贈された図書は常務委員会に報告され,会誌にも記載され,当学会の所有ではあるが,その図書の紹介記事を書いていただいた方に保管をお願いし,保管の場所の改善と有効利用を図っている。
- 日本地学教育学会は学会活動の一つとして,日本地質学会・地学団体研究会の3学会共催で地学教育セミナーや講演会などを20年近く開催している。昨年は,「気候変動−その過去・現在・未来−」のテーマで,気象学会の3名の方に講師をやって頂いた。それぞれ,豊富な新しい資料により,ご専門の立場から興味ある講演をされ,また解明される必要のある多くの課題についてもご講義された。
- この3月に告示された高等学校の新学習指導要領には「教育情報」が新設された。小・中・高校の学習指導要領には「総合の時間」が新設になり,教育情報に関する内容が必要になることが予想される。気象関係は,理科教育の中でも情報の収集及び利用が最も進んでいるので、大学教育学部では改組転換の機会を生かされるようお願いしたい。
- 近年,夜間大学院の開設が進み,現職の教員が受講しやすくなってきている。ところが,環境について学ぼうとすると,環境の関係科目の多くは,社会科の所属になっているという現実がある。理科の先生が社会科への進学となると、本人とともに管理・設置者側にも抵抗がある。もし,上記5のような受け皿があれば,これから勉強しょうとする若い先生方の励みになることと思っている。
- 小・中・高校には,「理科教育振興法」という,実験の設備及び器具について基準を定め,それらを購入するときには半額を国が負担する法律がある。その中では,実験・観察に必要な器具は前世紀の遺物そのものであると言って良いほどのものがリストされている。中学校や高等学校では,エレクトロニクスに強い先生のいるところはそれなりによいようであるが,業務並にとまで行かなくても,貴学会が現代的な方向へご指導されることを望んでいる。
- 天気図関係の記号や天気に関する基準などが近年の理科年表には見られなくなって,気象科学事典の方に移されている。一方,地震の震度階などは従来通りに見られるので,天気図のことが理科年表にあっても良いのではないかと思っている。あると大変便利である。
- 水蒸気圧は殆どの場合がmbかhPaであるが,中学校や高等学校の教科書にはg/m3が使われている。教科書の場合,易しくすることが返って分かり難くしてしまうことになることを注意してほしい。また日常生活との対応にも注意して欲しい。
- 地学教育学会の活動として,入試センターの試験問題の検討会を行い,センターに送付している。本年は特に,「地学1B」に気象関係は1問だけであり,気象現象の基本的な題材から取ってはいるが,グラフの読みとりの問題ではないかという意見もあった。日本気象学会の会員の中から教科書や問題作成にかかわっている方もおられるので,教育研究にも関心を持っていただきたい。
- 日本学術会議第4部会員科学教育研究連絡委員会委員長 坂元昂先生より,『日学選書9「21世紀の教育にふさわしいカリキュラムの提案」に重大な誤りがありました。』という詫び状の中で,「とかく教育研究にありがちな原著軽視,引用無視の風潮を防ぐことができれば,過ちを将来の教育研究の改善に向けることができ」と述べられており,地学教育学会はこのご指摘を真摯に受け止め会員にもこの主旨の徹底を計り努力いたしております。
(藤吉評議員)
気象に関する知識を一般国民に伝えることはテレビ放送などメデイアの役目の一つと考えている。以前は気象には素人が担当していたための制約があったが,気象予報士の誕生によってこの制約が無くなるかと期待してたら,放送時間の制約,つまり,ニュース番組の中の気象情報のコーナーという制約から、時間枠を気象の都合だけで拡大したり縮小したりする自由がなく,勢い気象予報士らしさを発揮することがなかなか出来ないでいる。しかし,この問題は放送のデジタル化という目前に迫った状況の激変によって大きく変わる可能性がある。つまり,気象情報の専門チャンネルがいくつか誕生することになり,その段階では気象学の普及という面でも大いに学会の皆さんのお力をお借りしたい。
もう一つ,地球温暖化の問題に対して主として気象庁などメデイアが接触する機会に多い専門家は,立場上の問題もあったのかも知れないが,日本の専門家はなかなかはっきりとしたことをいってくれないという印象を持っていた。特に今のようにIPCCのような国際的な機関が無かった段階では、そのような傾向が強かったように思う。しかし,地球温暖化の問題のように,いかにも確かにそうだと分かってから対策をとったのでは間に合わなくなる問題に関しては,「危惧している」とか,「恐れがある」とか,「可能性がある」などといった表現でかまわないから,専門家としての見解を社会への警告や提言として発表することが必要ではないだろうか。
(真鍋評議員)
- 環境問題について,メディアでの取り扱いという観点から意見を述べたい。例えば温暖化問題について触れる場合,その影響を過大に評価しすぎるのもいけないし,過小に評価するのもいけない。また,地球温暖化については悪い面だけが強調されるようであるが,良い面もあるはずである。例えば寒い地方に住む人にとって温暖化はプラスの面もあるのではないか。このような良い面・悪い面の両方について検討し評価する必要がある。
- テレビへの対応についてであるが,テレビで取材する人と番組をプロデュースする人とは別な人である。プロデューサーはシナリオを作り、それに沿うように,取材された材料の中から断片を取り出し編集して番組を作成する。テレビの番組は視聴者の注目を引くような刺激的な内容となるように作られやすい。このため,研究者が取材ではいくつかの可能性について触れて発言したとしても,放送の中ではその1面,しかも社会的インパクトが大きくテレビ受けするような部分だけが取り上げられたりするようなことがある。例えば,温暖化に伴って異常気象が頻発する可能性が誇張されて報道されているが,気象が比較的ノーマルな年には,予報がはずれたという印象を人々に与える。そういったことが繰り返されると,結果的に研究者の信頼性が失われていくことになる。そのようなことにならないようにするために,メディアへの対応においては,取材内容が放送の中でどのように使われるのかを,番組作りの最後の段階まで確認するようなことが必要がある。
- 環境問題は自然科学の問題であり,社会問題でもある。産業の発展と規制という両面のバランスの調整も必要となる。初等・中等教育における気象分野での環境問題の教育は,問題を理解し判断できるような21世紀の市民を育てるという観点から行なわれるべきである。そういう問題が教科書でうまく取り扱われているかどうかチェックすべきである。そのために,教育者と研究者が集まって教育に関してワークショップを開き、文部省へ提言するようにしてはどうか。
(石井評議員)
- 懸案となっていた「気象技術講習会」が昨年から順調に進んでいるようで,喜んでいる。
- 真鍋先生のご指摘について,テレビの取材の中で、インパクトの大きい発言のみを取り上げる傾向は,今もままあるかと思う。これに対しては,インタビュー取材を依頼された時点で,番組意図やその展開などについてよく話をすることが大切だと思う。また,テレビなどではインタビューを長く使うことは難しいので,簡潔に要点をまとめて話す必要もあるかと思う。
(小倉名誉会員)
学校教育について述べたい。まず,文芸春秋の2月号で立花隆氏が「大学の物理教育」(日本物理学会発行)に載った興味深い調査結果を紹介している。それによると,中学の1,2年生で,理科が大好きまたは好きな生徒の割合は調査された21カ国の中で,日本は最低で約55%しかなく,例えばシンガポールでは92%もある。将来科学を使う仕事をしたいと考えている生徒の割合でも日本は再び最低で約20%しかなく,一方シンガポールでは約60%,アメリカでも約50%ある。理科を好きにさせるためには,子供に知的好奇心を起こさせるような教育を行なわなければならない。本来、気象や天文に興味を持つ子供は多いから,気象や天文の授業を通じて,子供たちに面白さをわからせることにより,理科を好きにさせることができるだろう。近年,中学校の授業時間は減りつつあるが理科の授業時間だけでなく,自由時間などを利用するのもよい。高校は受験で忙しいので,ターゲットとしては中学校がよい。それも,中・高6年制の学校がよい。この3月にはじめて中学3年生の気象予報士が誕生した。中学生の学習能力には無限に近いものがある。ここで重要なことは,まず中学校の理科の先生に気象が分かり気象が好きになってもらうことである。そのために,理科の先生を集めて講習会を行ったり,ワークショップを開くことを提案したい。
次に,一般への普及については,特に具体的な案はないが,近年気象庁では,多くの地方気象台などでオープンハウスを開催して,地域との交流に努力されていることに敬意を表したい。気象台職員が多忙の中で展示や実験装置を準備し,一般に公開して,普及に大きな貢献をしていると思う。すでにかなりの数の気象予報士が誕生して全国に広く分布しており,支部も結成されているので,これらの人にボランティアをお願いして普及を図るのも一つの方法ではないか。テレビの気象情報も気象知識の普及にとって貴重な時間である。子供たちは気象に興味を持っている。気象情報の時間をもっと長くとれれば,天気予報を伝えるだけでなく,いろいろな興味ある気象の話題を提供できるので,なおよいと思う。
全体討論
(学会)
何人かの評議員の方のお話に共通する部分がある。それは,気象と他分野との関わりということである。気象学を理科として見るか社会科として見るか。イギリスでは昔からnatural history という概念があって,その中から自然科学が生まれてきているようだ。社会科と理科の接点についてどう考えるか伺いたい。自然科学と社会科の入り口の段階はどうなっているか。
(榊原評議員)
イギリスでは10〜20年前から小学校低学年で気温や風向を教えている。気象学としてではなく,日常基本のこととしてやっており,日本とはちょっと違う。
(学会)
夏季大学を実施した経験について学会からお話したい。
- 現在でも学校の先生方が参加されているが,そもそも夏季大学が始められた目的は,先生方の学校での気象教育をサポートするということだったのではないだろうか。そして,初期の段階では少数の先生を集めたワークショップのようなものであったものと思う。夏季大学をこのような初期に行われていたようなものにするということを考えてよいのではないか。
- 一般に,コリオリ力がどうもわかりにくいようである。また,温暖化を科学的に理解することは難しいようである。このため、温暖化は地球を毛布で覆ったようなものであるというような説明をするのであるが,そうするとなんとなくわかってくれる。しかし,こういう理解でいいのかと考える。
- すべてわかったこととして知識を伝えるような講義は聴衆にとって退屈なようである。研究者が議論したり,まだわかっていない問題についていろんな説があることなど、学問がダイナミックなものであるということが伝わると興味を持って聞いてもらえる。
(真鍋評議員)
温暖化問題について理解するためには、温暖化というのは地球を毛布でくるんだようなものであるという理解では不充分で、キルヒホッフの法則くらいはわかっていないと正しい理解は得られない。ある程度の自然科学の知識は不可欠である。これを低学年で教えるのは難しいかもしれない。
アメリカでは,民間気象会社があって天気予報をやってくれるから,NOAA(米国海洋大気庁)はいらないという議論をする国会議員がいる。気象をよくわかっていないために,こういう発言が出てくる。国の指導者には気象についてある程度理解しておいてもらう必要がある。社会科学と自然科学についての調和のとれた知識が必要である。
(学会)
先ほど知的好奇心というお話があったが,環境問題は知的好奇心の対象になりうるか。
(真鍋評議員)
対象になりうると思う。好奇心を起こさせる点では,アメリカのやり方のほうが日本よりも良い。日本の場合は試験が重視されており授業がつまらないと思う。子供達の間では,テレビゲームがはやっている。ゲームなら喜んでやると思う。気象のゲームソフトを作ってみるのも良いかもしれない。
(真鍋評議員)
最近の研究はコンピューターが盛んに使われるようになり,問題が複雑化してきた。Integrated scienceと称して何でもかんでもコンピューターに組み込んで計算をするというやり方になってきつつある。何らかの結果は出てくるが,何が起きているのかわからないことがある。昔は,単純な問題できちんと得くことができ理解できた。現在は,それぞれの研究により結果は得られるが,いろいろな不確定要素や可能性が考えられるなど,科学の成果がわからないということになってきている。
(小倉名誉会員)
環境問題では,さらに人間がからんでくる。人間が入ると経済の問題となり,人間の判断が入る。そのため,問題がややこしくなる。
(学会)
自然現象と人間との関係ということについて,番組を制作し放送する立場からのご意見を伺いたい。臓器移植など,医学と生命に関してはいかがか。
(藤吉評議員)
脳死判定と臓器移植については,その実施は時間の問題であった。放送現場では、Xデーとして,準備をしてきた。脳死の問題は,それが実施され,マスコミで取り上げられたことにより,人々の関心と大きな反響を呼んだ。何か具体的な出来事があって初めて,わかってもらえるというところがある。視聴者は,(具体的な出来事についての放送を)興味本位で見て関心を持つ。人々は,防災についても興味があって関心は持っているが,自分のものとしては受け入れにくいようである。それに逆らいながら情報を提供しようとするのは難しい。手を変え品を変えて何度も情報提供していくほかはないのか。知恵がほしい。阪神大震災は、予想もしていなかった大きな被害を出して,人々に大きな衝撃を与えた。そのことにより一時は,都市部での地震と防災に対する関心が非常に高まった。しかし,あの経験は現在ではすでに風化している。温暖化の問題についても同じようなことが起きる可能性がある。そうならないようにするために,第1線の方の力を借りたい。気象学会の発言に期待する。
(真鍋評議員)
温暖化の影響が大きくなってくるのは、ずっと将来のことなので,温暖化問題だけでは(社会を動かす)説得力を持たない。大気汚染、水汚染等を含む環境問題全体として見ていくのが大事ではないか。環境問題は,税金の使い方が変わったり,我々のライフスタイルが変わってくるというようなことにまでつながる問題である。
(藤吉評議員)
石油消費を抑えるため値上げをすべきとの意見もあるが,国会では全く議論していない(炭素税を導入している国もあるのに)。若い人は自分たちの将来を左右する環境問題として,非常に大きな関心を持っており,今後国会で大いに議論してもらう必要があると思う。
(学会)
経済成長と環境問題の解決は、お互いに相反する面があると思う。これらの調整をどのように図ればよいのかというのは難しい問題である。
(真鍋評議員)
確かに,難しい問題である。現在は,温暖化予測が不確定過ぎて政策が決められないと言う人もいるが,モデルが良くなって精度良く予想ができるようになると,利害関係が明瞭になってますます決められなくなるのではないかと思う。だから京都会議のような交渉をしてもうまくいかない。日本がやるべきことの一つはclean and efficient technologyの開発である。
書面で頂いた意見
(平啓介評議員)
日本海洋学会は「海洋学と教育」シンポジウムを4回開催して,教育現場の教師とも意見を交換してきた。小学校の理科には海洋が登場せず,5年の社会で食料として水産が取り上げられ,関係機関等へ自由研究で問い合わせがあるとのことで大いに驚いている。海の無い地域があり,海岸も防波堤で囲まれアプローチできないとの意見もあった。自然に親しむために海洋学に関する観察実験の手引きを準備することになり,広報委員会が中心になって作業している。
気象はその点どこでも親しむことができるので事情が異なると思う。気象に関心を持たせ,社会人として天気図や衛星写真から天候を判断する技術を身につけることが重要である。気象測定に親しむための工夫が必要であろう。ジュネーブのショウウィンドウで気圧,気温,湿度の測定装置(ドイツ製の室内装飾品)を見かけたことがある。日本気象学会として、デジタル記憶式で毎時データと最高最低を表示する気象観測器を開発し(当然業者委託とする),安価で販売する試みが有効であると思う。
小中学校向きの気象学テキストを学会が作成し,教師や会員,気象予報士を活用して普及教室の手助けをすることも重要である。
(尾崎洋二評議員)
「一般市民・社会人への啓蒙活動の位置づけ」および「初等中等教育における気象学の位置づけ」について:
私は日本天文学会の理事長をしておりますが,天文学会も気象学会と全く同じような事情にあり,同じ問題を抱えております。そこで,参考のために,日本天文学会が現在行っている活動について述べさせて頂きます。
まず,学会独自の活動という点では,実際には人的にもお金の面でも制限が多く,
十分の活動ができているとは思えません。現在,天文学会が行なっている主な活動は,学会の機関紙の発行と年2回開かれる総会の際に,公開講演会を開いていることです。雑誌の発行ですが,「天文月報」という名前の月刊誌を発行して,会員および準会員全員に配布しております。天文月報は,基本的には天文学についての色々の話題の解説記事を主体にした雑誌で,執筆者は多くは研究者ですが,一般読者にも理解できるように易しく書くように努力しております。公開講演会は,年2回開催される総会の際に,総会の開催される地域において一般市民を対象に開かれるものです。入場料は基本的に無料です。講演会の講師は,基本的には天文学会の会員の研究者が行っております。その他には,学会独自の活動ではありませんが,国立天文台の中に広報普及室という部門が新たに出来,そこで一般市民を対象にした天文学の広報普及活動を行っています。
「初等中等教育における気象学の位置づけ」について:
天文学会では、学会内部に「教育委員会」をおいて,こうした問題について検討を行っています。現在,初等教育,中等教育での最大の問題は,学校の週休2日制とゆとり教育で理科の時間が減らされていて,十分に時間が取れないことです。また,インターネットなどを通じて,ハッブル宇宙望遠鏡,すばる望遠鏡など最新,最先端の映像や情報に接する機会が増え,子供達にも宇宙についての興味が増大しています。教育の場でもそうした子供たちの興味をうまく生かす工夫が望まれます。
(笠原彰名誉会員)
NCARでも一般市民・社会人への気象に関しての啓蒙運動に熱心で,ビルディングのロビーにサイエンスミュージアムにあるような物理過程の実験用デモンストレーションのディスプレイがいろいろと増えてきました。そのツアーにフルタイム2名のスタッフのほか数名のテンポラリーのスタッフがおります。
日本気象学会ホームページへ