坪木 和久

自分のやりたいことをやるには、多くの困難を自ら克服しなければならない

坪木 和久

名古屋大学 宇宙地球環境研究所 教授

Q. 学部・大学院での専門

地球物理学/理学博士(北海道大学)

Q. 過去の研究履歴(略歴など)

日本学術振興会特別研究員(北海道大学低温科学研究所)
東京大学海洋研究所 助手
名古屋大学大気水圏科学研究所 助教授
名古屋大学地球水循環研究センター 助教授/准教授、教授を経て
2015年10月より名古屋大学宇宙地球環境研究所 教授

Q. 現在の専門分野(仕事の内容)

雲・降水を伴うメソスケール現象を、主に観測と数値モデルにより研究しています。そのなかでも特に台風を主な研究対象として、名古屋大学で開発した雲解像モデルCReSSを用いてシミュレーションを行ったり、また、沖縄などでレーダーや気球を用いた現場観測を行っています。さらに現在、台風の航空機観測を行うことを計画し実施しようとしています。

Q. この分野に入ったきっかけ

最初は雪の研究、特に降ってくる雪の研究をしたいと思って、気象学の世界に入りました。おそらくそのきっかけと思われるのは、小学校のころに親が与えてくれた学研の「科学と学習」という月刊誌だったのだと思います。私はいわゆる気象少年ではありませんでしたが、そのなかで読んだ中谷宇吉郎の話が心の中のどこかに残っていて、10数年を超えて大学進学で、中谷宇吉郎のいた所の近くに偶然来られたことで、雪の研究に何かを感じたのだろうと思います。

Q. 現在の研究(仕事)の魅力やおもしろさ

研究の魅力は、何かについて自由に考えられることだと思います。それはあたかも深い霧のなかを方向がわからず歩き回ることに似ています。それは不安で苦しいことですが、考え続けているとあるとき突然霧が晴れるように前が見えることがあります。それはたいへんロマンチックな瞬間です。

Q. これまで研究(仕事)をしていて辛かったこと(解決策なども)

研究をしていて辛いとは思いませんが、さまざまな雑務に忙殺されて研究ができないことが多く、それが辛いですね。解決策はやはり一つひとつこなしていくことしかありません。

Q. 研究(仕事)以外の楽しみや趣味

特段の趣味を持つ余裕はありませんが、家族といること、まだ小さい娘と一緒にいることが一番の楽しみです。

Q. 仕事とプライベート(家庭など)のバランス

仕事もプライベートもすることはいくらでもあるので、そのバランスをとることをいつも考えています。仕事を切り上げること、それもまた重要な技術だと思います。週末はできるだけ仕事をせず、家族といるようにしています。

Q. 進路選択を控えた大学生、大学院生へのメッセージ

気象学にはさまざまな研究対象あるいは研究分野という扉がたくさんあって、小さな扉と思って開けてみるとその先には広大な世界が広がっていることもあり、また、それぞれの扉は気象学の周辺のさまざまな分野につながっているということもあります。その多様性と奥行きの広さが気象学の魅力の一つであり、誰にも”これは”と思える研究対象を見つけることのできる分野だと思います。気象学は、常に新しい現象が発見され、新しい概念や方法が生み出される進化・発展の速い学問分野と思います。新しく入ってきた人には必ず未開拓の新しい領域が用意されていて、そこを自分ではじめて踏み分けていけるという魅力ある分野です。ただ自分のやりたいことをやるには、多くの困難を自ら克服しなければならないことを理解しておいてもらいたいと思います。

Q. 民間経験・海外経験

もう10数年も前のことですが、カナダのオンタリオ州にあるトロント大学に滞在したことがあります。カナダ最大の総合大学ですが、神学をはじめとする文系が大学の半分あるいはそれ以上を占めていて、理系が大きな割合を占める日本の国立の総合大学との違いに驚きました。成熟した文化のある国はこのようになるのかと日本の後進性を感じました。物理系の研究室に居室をもらっていましたが、午後5時を過ぎると研究室に残っているのはいつも私だけでした。5時できっちり仕事や研究をやめるその豊かさと、それでも成果をあげている本当の力に、日本はまだまだと強く感じました。

Q. もっと知りたい