鈴木賢士

将来とか進路に対して鈍感になることも大切なのかもしれません

鈴木賢士


山口大学大学院創成科学研究科 教授

Q. 学部・大学院での専門

気象 / 博士(理学・九州大学)

Q. 過去の研究履歴(略歴など)

九州大学(~大学院)

日本学術振興会特別研究員(海洋科学技術センター)

山口大学農学部(助手~准教授)

文部科学省在外研究員(米国NCAR)

山口大学大学院創成科学研究科(准教授~教授)

Q. 現在の専門分野(仕事の内容)

降水粒子撮像ゾンデなどの観測機器の開発に興味があり、それを用いた雲物理学的観測研究をやっています。気象学分野では珍しい農学部に職を得てから25年が過ぎました(昔は農学部にも気象レーダーがありましたし、雨や雹の研究も行われていました)。農学部にこんなことやってる人がいるんだ、と言われることにも今ではすっかり慣れました(笑)。研究は自己満足のための趣味だと言う人もいますが、好きなことがやれている今の環境には感謝しています。

Q. この分野に入ったきっかけ

雪が降らない土地で生まれ育ったため、雪が降った時のわくわく感。台風が近づく時のドキドキ感。まだ幼い頃、乾燥した冬にセーターを着た父親に抱っこされて感じた静電気が雷と同じだと教えてもらったこと。

Q. 現在の研究(仕事)の魅力やおもしろさ

自らで作った観測機器を使って、自らで現象を観測し、その現象を明らかにすること。

Q. これまで研究(仕事)をしていて辛かったこと(解決策なども)

今と違って、まだ学生や駆け出しだった頃は、国内外どこでも観測に行くと雨を待つツラい日々を過ごしました。早く帰りたい!と思ってカレンダーに過ぎた日に×印をつけていく毎日でしたが、観測が終わりしばらくたつとまた観測行きたいなと思ってました。「みらい」での観測で出航してすぐに観測機器の故障が見つかったときは、このまま1カ月どうして過ごそうかとお先真っ暗になりました。乗船中は装置をたたいたりしてだましだまし何とかしのぎました。下船後にわかった原因は接触不良でしたが、たたくと一時的に導通が復活していたんですね。今では笑い話です。今はその観測を自分で立案して実行する側になりましたので、別の心配事は増えましたが、ツラいよりも楽しいの方が勝ってます。大学では講義や会議も仕事ですが、私の場合は「観測に行く」という逃げ道(?)があるから楽しめているのかもしれません。

Q. 仕事とプライベート(家庭など)のバランス

観測で留守にすることが多いのですが、いつの間にか家族から何も言われなくなりました。お天気には興味ないけど私の仕事には理解のある家族には感謝しています。

Q. 進路選択を控えた大学生、大学院生へのメッセージ

私の場合、大学院進学がバブルの時代でしたので今と単純に比較はできないですが、振り返ってみると当時は特に将来のことを考えて進学したわけではなく、もう少し観測研究を続けてみたいなと何となく進学したように思います。将来とか進路に対して鈍感だったのかもしれませんが、鈍感になることも大切なのかもしれません。職を得ることができたのは幸運でしたが、そういう縁は大切にしています。いろいろな岐路に立った時にその時々で出会えた人への感謝は忘れないようにしたいと思っています。

Q. 民間経験・海外経験

外国の研究機関には学位を持ったエンジニアがいて、日本の大学でいう技官とはまた違い、研究者と対等に仕事(研究)をしています。気象学分野で技術開発から実際のフィールドまで活躍するエンジニアは日本にはまだまだ少なく、そういう人材が活躍できる場もまだまだ少ないなと感じています。