「週一日は完全に休む」
Q. 学部・大学院での専門
気象学 / 京都大学理学博士
Q. 過去の研究履歴(略歴など)
京都大学大学院理学研究科・助手(地球惑星物理学専攻):MUレーダー、ラジオゾンデ観測・高解像GCMによる重力波研究。近慣性重力波の発見。中間規模波動の発見。赤道成層圏準2年周期振動の駆動メカニズムに重力波が本質であることを確認。
国立極地研究所・助教授(北極圏環境研究センター、研究教育系):南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)計画立案とフィージビリティスタディ。オゾンホール消滅の力学に関する観測研究。
Q. 現在の専門分野(仕事の内容)
(現職着任以降)PANSYレーダーの実現と11年連続観測による南極大気研究。重力波解像GCMを用いた中層大気力学の研究。3次元ラグランジュ流理論構築。 全中性大気データ同化研究。中層大気階層構造の解明(重力波・ロスビー波の共働。中層大気での波発生。ブリューワー・ドブソン循環・中間圏循環等、成層圏突然昇温、成層圏界面変動等)。 国際共同観測・高解像GCMによる南北両半球結合の研究。
Q. この分野に入ったきっかけ
もともと数学・理科が好きだった。小学生の時に電流の流れる導線周りに磁界ができることを習って感動し、物理に興味をもった。中学生のころ天気図作成を趣味とした。 大学の講義で、天気図でなじみの温帯低気圧の構造や発達が物理的に説明できることがわかり、面白いと思った。
Q. 現在の研究(仕事)の魅力やおもしろさ
観測、データ解析やモデル計算で想定外または想定以上の結果が得られ、それが新しい力学メカニズムや力学解釈に結び付いた時。 共同研究者(大学院生を含む)と時を忘れる議論ができた時。論文を書き上げた時の達成感。観測や国際会議で世界中の様々な場所に行けること(全大陸に上陸した)。ほかにも多数。
Q. これまで研究(仕事)をしていて辛かったこと(解決策なども)
博士号を取得してから大学の承継ポスト(パーマネントなポスト)に就くまでの時間が当時としては長かったこと(4年)。女性であることのハンディキャップを強く感じていた。 解決策としては、深みのある研究をして読み応えのある論文を書いて説得力のある発表をするよう常に心がけた。 分野として女性のロールモデルはほとんどいなかったので、機会がある毎に、教授・助教授の先生方に自分がどのような研究者になりたいのかを聞いていただいた。
Q. 研究(仕事)以外の楽しみや趣味
ピアノ(もっと技術を磨きたい)。料理(パン・和菓子・洋菓子含む)
Q. 仕事とプライベート(家庭など)のバランス
週に1日は完全に休む。家事は種類ごとに主担当を決め、責任を明確化する。
Q. 進路選択を控えた大学生、大学院生へのメッセージ
気象学・大気科学はとてもやりごたえのある研究分野の一つです。私は40年近くこの分野にいますが、今でも充実しています。単身赴任歴は20年を超えました。私は図らずも子供がいない人生となりました。 子育ては幸せなことだと想像しますが、反面大変そうですね。パートナーの協力だけでなく、周りの方々にも協力を求めること、情報を集め、未来の自分への投資だと思ってお金を使うことをいとわないこと、などのアドバイスを聞いたことがあります。 世界には子供がいてかつ第一線の研究をしている女性研究者は沢山います。日本の若い方々にも頑張っていただきたいです。
Q. 民間経験・海外経験
修士卒業後、民間企業の研究所で1年ちょっと仕事をしました。 残業や土日に仕事が簡単にできないことにストレスを感じましたが、他社との競争においてグループの仲間意識があり楽しかったです。 米国の研究所(NWRA)で延べ半年以上仕事をしました。日本と異なり、9時ごろから仕事がはじまり17時にはほとんどの方が帰宅してしまいます。 それでも一流の研究成果を次々に発表しています。研究環境の違い(サポート体制など)が大きい気がします。