「青空の先に果てしなく広がる世界の謎と不思議を探る」
Q. 学部・大学院での専門
気象力学・中層大気科学 / 理学博士(京都大学)
Q. 過去の研究履歴(略歴など)
気象庁予報部数値予報課:数値予報現業
気象大学校:講師 総観気象学、数理統計学、情報科学などを担当
九州大学理学部地球惑星科学科:助教授 地球惑星流体力学講座
九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門:教授 流体圏・宇宙圏科学講座 大気流体力学分野
Q. 現在の専門分野(仕事の内容)
中層大気(高度10kmから110kmくらいまでの成層圏・中間圏・下部熱圏領域)における大気大循環、大気波動などの研究、上下大気との力学的結合過程、オゾンホール、成層圏突然昇温の予測可能性など
Q. この分野に入ったきっかけ
大学の学部3年生の頃、どの方向に進むかを決めなければならなくなった時、当時(今もそうだが)中層大気領域は観測が難しく、色々な新しい現象が明らかになりつつあった。そのような状況の下で、誰も見たことのない、非常に高いところの景色を見てみたいと思い、この分野に入った。
Q. 現在の研究(仕事)の魅力やおもしろさ
今まで知られていなかった新しい現象を発見したり、そのメカニズムを明らかにできたりした時には、今でもわくわくとした気持ちになれる。研究職は、そういうことが許されている数少ない分野だと思う。ただし年齢とともに、研究以外の仕事がどんどん増えてきて、そちらで消耗するようになっているのは大変残念であるが。
Q. これまで研究(仕事)をしていて辛かったこと(解決策なども)
大学院生の頃は、将来や、研究そのものに対する漠然とした不安があった。もともと理学で行われている研究は、自然なり何なりの中に未知の対象を見いだして、その謎を解き明かそうという、いわば人類に根元的に備わる欲求を端的に具現している学問分野であり、その場合、そのような謎の解明が、実際に社会の役に立つかどうかは問題ではなく、少なくとも当初においては、利益や利害などという観念からは全く自由なものであろう。そういう意味で、理学は芸術の分野に通じる面がある。しかしながら、理学を職業として選んでしまった際には、そうも超絶してはいられないのも事実であり、自身の研究が何かの役に立っているのだろうか、ということは、繰り返し頭の中に浮かび上がってくるのではないだろうか。その点、社会に対し何らかの貢献をしているという意識があれば、かなりの部分救われる気分になる。気象学・大気科学は、理学の中でも、直接的に社会の役に立つ側面を強く持った分野であり、理学的な謎の解明への欲求と、社会への貢献のバランスが保てる学問領域である。自分はこう考えながら、ここまで乗り越えてこられたように思う。
Q. 仕事とプライベート(家庭など)のバランス
研究は仕事の一部ではあるが、ある意味趣味の延長であり、いつでも頭に浮かんできた時にそのことを考えることができ、それに対しては、ほぼほぼ苦痛を感じない。一方で、大学の教員は(大学の教員に限らずいろんな研究機関や会社でも同じだろうが)、研究以外に様々な雑用を抱えており、現実的には、この雑用の部分に対し給料をもらっているのだともいえる(給料を払っている側からいえば、これは「雑用」でなく、むしろこちらが本務というべきなのであろうが、ここでは敢えて雑用と表現しておく)。人によっては、趣味の研究と、業務として行う研究の二つを抱えていて、その業務として行う研究が雑用的な部分に当たるかもしれない。考えてみれば、これら雑用の部分を決められた期限までに処理するのに日々苦闘しているのが現実で、趣味の研究とのきわどいバランスの上に、日々生活しているのだと思う。
Q. 進路選択を控えた大学生、大学院生へのメッセージ
目の前の選択肢に迷った時は、楽そうな方でなく、敢えて、“しんどい”方の道を選ぶのがいいのではないかと思う。仮にうまくいかなかったとしても、そういうしんどい道を頑張って歩んでいく過程そのものに価値があると思う。そのような気概を持って、いろんな新しいことにチャレンジして欲しい。
Q. 民間経験・海外経験
1999年から2000年にかけて、オックスフォード大学のDavid G. Andrews博士のところに訪問研究員として滞在した。歴史のある街に住み、職住接近で、とても快適な毎日だった。毎日11時頃からお茶の時間があり、院生やスタッフと色々雑談するのも楽しかった。