「百年後の科学を作る」
Q. 学部・大学院での専門
学部は物理学,大学院は大気科学 / PhD (Atmospheric Sciences), 米国ワシントン大学
Q. 過去の研究履歴(略歴など)
東京大学理学部物理学科にいたときに,隣の学科の東塚知己先生にご厚意で面倒を見ていただき,そのまま修士1年の9月までいました。その後University of WashingtonのDennis Hartmann先生に師事し,修士号と博士号を取得しました。帰国後,東京大学にて日本学術振興会特別研究員PDとして,三浦裕亮先生に1年間お世話になりました。2019年にお茶の水女子大学の助教として拾っていただき,テニュア審査を経て現職です。
Q. 現在の専門分野(仕事の内容)
気候系において,特に海面水温がどのような役割を果たしているのかに興味があり,理論とデータ解析をベースに様々な研究を行っています。博士論文で取り組んでいたのは「地球温暖化が起こると太平洋は西と東のどちらから先に暖まるか?」という問題で,エルニーニョ南方振動現象(ENSO)に詳しくなりました。その後,三浦研にいたときに,境界流同期現象(BCS)を発見して,Science誌に掲載されました。現在は,ENSOやBCSの研究を発展させつつ,熱帯と中緯度の境界で発生する異常気象をどう理解すべきかに興味を持っています。
Q. この分野に入ったきっかけ
宇都宮高校にいたときに,物理学と地球環境問題に興味がありました。修学旅行で高校OBの山形俊男先生にお会いする機会を得て,天気予報やエルニーニョ現象の物理学についてのお話を聞き,自分がこの人生を使って成したいことは「物理を使って地球を解く」ということだと直観しました。
Q. 現在の研究(仕事)の魅力やおもしろさ
日常的な現象を数式で理解するのは,面白いです。ずっとわからなかった問題に対して,予想外の解決が降ってきた時も興奮します!しかもそれが,社会の役に立ちます。気象学は,趣味と実益を兼ねる学問です。
Q. これまで研究(仕事)をしていて辛かったこと(解決策なども)
子育てや教育運営業務との両立が,現在進行形で大変です。解決策は,「論文を書く頻度は落としても,論文の質は落とさない」です。
Q. 研究(仕事)以外の楽しみや趣味
子供と遊ぶこと,散歩すること,スタバで読書すること,やすべぇのつけ麺を食べること,温泉に入ることが好きです。あと,(まぁこれは仕事かもしれませんが)最近は書籍の執筆にハマっています。
Q. 仕事とプライベート(家庭など)のバランス
朝は妻の出勤が早いので,僕は9時に子供を送って,大学に着くのは10時半過ぎです。夕方は妻が先に家に着くので,最近は6時頃に大学を出て,子供と戯れてから,ちょっと仕事をして寝ます。また,木曜日は東京に行かずに自宅等で仕事をしつつ家事・育児を担当する代わりに,日曜日に仕事に行くことが多いです。
Q. 進路選択を控えた大学生、大学院生へのメッセージ
気象学や物理気候学は,数学・物理学・化学・生物学・情報科学などを基礎とするだけでなく,法律・経済・文学などとも密接に関連する学問で,「文理両道」に学んだことがなんでも役に立ちます。好奇心旺盛な方,諦めの悪い方,生き急いでいない方(すぐに華美な結果が出なくても飽きてしまわない方)には,とてもオススメできる学問です。百年後の科学を,一緒に作りませんか?
Q. 民間経験・海外経験
僕はアメリカの大学院に進学しましたが,研究コミュニティの大きさが魅力だと思いました。そのため,自分と学術的な興味が近い人間を見つけやすい気がします。また,女性の活躍が目立つのも素晴らしいところだと思います(僕が女子大に赴任しようと思ったのも,その影響です)。一方,僕は食べ物や治安,清潔さなどの点が気になりました。僕にとって,アメリカは修行する場所,日本は落ち着いて生きていける場所,という感じです。
もっと知りたい
拙著『Pythonによる気象・気候データ解析I, II』が朝倉書店さんより好評発売中です。特にI巻(赤本)は、意欲的な高校生や大学1年生から楽しめる仕上がりとなっています。気象や気候はもちろん、季節変動する売り上げデータなどの取り扱いに興味がある大学生やビジネスパーソンが、最初に学ぶべき基礎を詳述しています。また、必ずしも気象や気候に興味がなくても、教養としてのプログラミング・可視化・データ解析の初等的な教材として、気象という身近な具体例を交えながら楽しく学んでいただける内容になっています。
・ウェブサイト: https://sites.google.com/site/tsubasakohyama
・メールアドレス: tsubasa@is.ocha.ac.jp
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